この記事では、会社法について基本的な理解が必要でこれから起業する人、起業して間もない人がおおまかにポイントをつかめる内容です。
1.持分会社の意義
持ち分会社は、合同会社、合資会社及び合同会社の総称である(575条)これらの会社はその社員の責任の点ではそれぞれ異なる規定が設けられているが(576条・2項・3項・4項)社員間の結合が強いことや、私的自治が強く要求されていることから、内部的には組合的な規定が設けられている点では共通している。
会社法は、持分会社すべてに共通する事項について共通の規定を設け、各会社に特有の事項については、個別的な特則を置いている。(578条・625条等)
持分会社
1合同会社
合名会社は、無限責任会社のみで組織される会社であり、各会社は会社債権者に対して連帯して直接の無限責任を負う。(576条2項・580条)合名会社は、信頼関係を有するきわめて少数の者が共同して、比較的小規模な事業を行う場合に適する企業形態である。
2合資会社
合資会社は、無限責任会社と有限責任会社とで組織される会社である。(576条3項)無限責任社員は、出資の価格を有限として会社責任者に対して直接の責任を負う。合資会社は、社員の一部に有限責任社員が存在する点で合名会社と異なる。
3合同会社
合同会社は、間接有限会社のみで組織される会社である(576条4項・578条・580条2項) 合同会社はジョイントベンチャー企業等において、内部的には高い自由度を有し、外部
的には社員の有限社員が保障されるような企業形態の創設が望まれていたため、米国の各州法で導入されていたⅬⅬⅭ概念を念頭に採用されたものである。
合名会社
構成員数 1人以上
構成員の責任 無限責任(576条Ⅱ)
出資の目的 金銭・その他の財産・信用・労務
出資時期 いつでもよい
業務執行機関 原則 社員(590条Ⅰ)
代表機関 原則 社員(590条Ⅰ)
定款変更の方法 原則 総社員の同意(637条)
出資の払戻 可能 (624条Ⅰ)
清算 任意清算も可(668条Ⅰ)
合資会社
構成員数 2人以上
構成員の責任 無限責任又は有限責任(576条Ⅲ)
出資の目的 無限責任社員は合名会社の社員と同じ
有限会社社員は金銭・その他の財産に限る(576条1⑥)
出資の時期 いつでも良い
業務執行機関 原則社員(590条Ⅰ)
代表機関 原則社員(590条Ⅰ)
定款変更の方法 原則総社員の同意(637条)
出資の払戻 可能(632条Ⅰ条・576条Ⅰ⑥)
清算 任意清算も可能(668条Ⅰ)
<合同会社>
構成員数1人以上
構成員の責任 有限責任(576条Ⅵ)
出資の目的 金銭・その他の財産に限る
出資の時期 定款作成後設立の登記をするときまでに全額を払込み又は全部を給付しなければばらない
業務執行機関 原則社員(590条Ⅰ)
代表機関 原則社員(590条Ⅰ)
定款変更の方法 原則総社員の同意(637条)
出資の払戻 定款を変更してその出資の価格を減少する場合を除き不可(632条Ⅰ・576条Ⅰ⑥)
清算 任意清算は不可(668条Ⅰ) (注)定款で別段の定めをすることができる(590Ⅰ・599Ⅰ
構成員の責任 無限責任又は有限責任(576条Ⅲ)
出資の目的 無限責任社員は合名会社の社員と同じ
有限会社社員は金銭・その他の財産に限る(576条1⑥)
出資の時期 いつでも良い
業務執行機関 原則社員(590条Ⅰ)
代表機関 原則社員(590条Ⅰ)
定款変更の方法 原則総社員の同意(637条)
出資の払戻 可能(632条Ⅰ条・576条Ⅰ⑥)
清算 任意清算も可能(668条)
<合同会社>
構成員数1人以上
構成員の責任 有限責任(576条Ⅵ)
出資の目的 金銭・その他の財産に限る
出資の時期 定款作成後設立の登記をするときまでに全額を払込み又は全部を給付しなければばらない
業務執行機関 原則社員(590条Ⅰ)
代表機関 原則社員(590条Ⅰ)
定款変更の方法 原則総社員の同意(637条)
出資の払戻 定款を変更してその出資の価格を減少する場合を除き不可(632条Ⅰ・576条Ⅰ⑥)
清算 任意清算は不可(668条Ⅰ) (注)定款で別段の定めをすることができる(590Ⅰ・599Ⅰ)
合同会社
出資者の責任 出資者全員が有限責任(104・580Ⅱ)
保護者保護 ①配当規制あり(461Ⅰ⑧・628)
②計算書類の開示制度あり(442・618)
③資金の額の登記制度あり(911Ⅲ⑤・914⑤)
純資産額が300万円を下回る場合の配当規制(458)は株式会社のみに存在。
貸借対照表(及び損益計算表)の公告義務が課せられているのも株式会社のみ(440)。
社員の入社は、持分譲渡・入社・定款の変更については、原則として出資者全員の一致が必要(585・637)
業務執行は所有と経営の一致で、原則として出資者全員が業務を執行する。ただし、定款で別段の定めを設けることができる。(590Ⅰ)
損益の分配は、定款の定めにより、柔軟な損益分配が可能であり、定めがなければ出資の価格に応じる(622)
法人格はあります。構成員の数は、1人でも可能です。
組織変更は、株式会社と持分会社は、相互に組織変更可(743・744・746)
合併は可能です。(748)
会社分割は①会社分割をすることができるのは、株式会社又は合同会社のみ
②承継会社又は設立会社となる会社の種類に制限はない(2条29号、30号)
株式交換は①株式交換完全親会社となることができるのは、株式会社又は合同会社のみ
②株式交換完全子会社となることができるのは、その性質上株式会社のみ
株式移転は不可能
持分会社のうち、設立の登記までに出資の履行をしなければならない
合同会社です(法578条)。合同会社の社員は、債権者に対して有限の間接責任を負う株主と類似の地位にあり、出資をすることにより社員となる立場にあります。これに対して、合名会社、合資会社(有限責任社員を含む)の社員の出資は、会社設立後に行ってもかまいません。
合併は可能です。(748)
会社分割は①会社分割をすることができるのは、株式会社又は合同会社のみ
②承継会社又は設立会社となる会社の種類に制限はない(2条29号、30号)
株式交換は①株式交換完全親会社となることができるのは、株式会社又は合同会社のみ
②株式交換完全子会社となることができるのは、その性質上株式会社のみ
株式移転は不可能
持分会社のうち、設立の登記のときまでに出資の履行をしなければならない会社はあるのか?
合同会社です(法578条)。合同会社の社員は、債権者に対して有限の間接責任を負う株主と類似の地位にあり、出資をすることにより社員となる立場にあります。これに対して、合名会社、合資会社(有限責任社員を含む)の社員の出資は、会社設立後に行ってもかまいません。
持分会社の社員の責任
持分会社の社員は、持分会社の財産をもって債務を完済することができない場合および持分会社の財産に対する強制執行がその効を奏しなかった場合には、持分会社の債務を連帯して弁済する義務を負います(580条1項)ただし、有限責任社員には、未履行分の出資の価格についてだけ、責任を負う(580条2項)このため、原則として未履行分の出資が存在しない合同会社の有限責任社員は株主と同様、会社債権者に責任を負わない。
保証人と持分会社の社員の責任
持分会社の社員の持分会社の債務についての責任は、保証人のそれと類似します。
- 催告の抗弁権、検索の抗弁権に類似の制度がある(580条1項)
- 社員は持分会社の抗弁権を会社債権者に主張することができる(581条1項)ただし、相殺権を援用することはできず持分会社の相殺権を理由として債務の支払を拒むことができるにとどまることが重要(581条2項)
合同会社の社員が例外的に債権者に直接責任を負うのはどういう場合か?
合資会社で無限責任社員が退社し、合同会社へのみなし定款変更(639条2項)がされた場合です。この場合、合資会社に出資が未履行の有限責任社員がいれば、みなし定款変更後の合同会社に出資が未履行の有限責任社員が生じます。このときは、その者は、会社債権者に未履行分について直接の責任を負います。このケースで出資の未履行者にはみなし定款変更の1カ月以内に出資をすることが義務つけられている(640条2項本文)
合同会社の社員が例外的に債権者に直接責任を負うのはどういう場合か?
ありません。社員全員が納得済みなら、それでかまいません。なお、現物出資財産の給付は、設立登記のときまですることを要しますが、合同会社の社員になろうとする者全員の同意があるときは、登記、登録などの第三者対抗要件は、合同会社の成立後に備えれば足ります(578条ただし書き) 持分会社においては、定款で、社員の出資の目的およびその価格または評価の標準を定めなければならないとされる(576条1項6号)すなわち、社員の出資が何によって行われるか(金銭、現物、労務、信用等)またそれについて具体的に特定することが求められ(金額あるいは土地であればどこの土地か)、さらに、金銭以外については評価額を記載または記録しなければならない。なお、有限社員の出資の目的は、金銭およびその他の財産に限られる(576条1項6号)合同会社においては、社員は定款の作成後、設立登記までに出資を全部履行しなければならない(578条)有限責任社員のみからなるこれらの会社は会社債権者の担保となるのは会社財産のみであり、一定の財産が現実に会社に拠出されることが求められるからである。さらに、株式会社では、金銭出資については払込金の保管証明書の交付を受けなければならず(64条)、現物出資については検査役の調査を要する(33条)
合名会社および合資会社は、出資は必ずしも設立段階で履行されなくてもよく、履行の時期や価格は自由に定めることができる。これは会社財産が拠出されていなくとも、無限責任社員または直接有限責任を負う合資会社社員が会社債権者に対して直接責任を負うからである。
参考文献:『演習ノート会社法(第7版)』著 奥島 孝康、鳥山 恭一 法学書院
『伊藤真試験対策講座 会社法第2版』著 伊藤真 弘文堂
『司法書士試験ブレークスルー9会社法・商法Ⅱ』 著 lecリーガルマインド
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