この記事はこれから起業する人、起業して間もない人がおおまかにポイントをつかめる内容です。
有限会社の廃止に伴う経過措置
1.有限会社の廃止に伴う経過措置は整備法(「会社法の施行に伴う関係法律の整備等にする法律」は、既存の有限会社、すなわち整備法1条3号の規定による廃止前の有限会社(旧有限会社法)の規定による有限会社であってこの法律の施行の際現に存するもの(旧有限会社)は、この法律の施行日以後は、会社法の規定による株式会社として存続する者と規定している(会社整備2条1項)
2.特例有限会社に関する会社法の特則。整備法では、会社法施行により株式会社となった旧有限会社について、その運営の継続性、安定性を確保するために必要な限度で旧有限会社と同様の規律を維持するための会社法の特則をおくこととしている(会社整備3条1項)、このような株式会社を特例有限会社と称する(会社整備3条2項)
3.特例有限会社への移行に伴う経過措置。整備法は、特例有限会社に移行に伴う経過措置について規定している。たとえば、取締役等の資格に関する経過措置(会社整備19条)計算書類の作成等に関する経過措置(会社整備法27条)などである。この記事ではおもにこれから企業するひと起業して間もない人が大まかにポイントをつかめる内容を記載しております。
特例有限会社の意義
有限会社は、会社法の施行に伴い、廃止された(会社整備1条3号)そのため、会社法の施行日までに旧有限会社法の規定に基づいて設立された有限会社であって会社法施行の際現に存するもの(以下、「旧有限会社」という)は、会社法施工後においては会社法の規定による株式会社として存続することになる(会社整備2条1項)。上記の規定により存続する株式会社であって、その商号中に「有限会社」という文字を用いる株式会社を、特例会社という。会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(以下「会社整備法」という)の規定により当然に旧有限会社は会社整備法2条1項の規定により特例有限会社となるため、旧有限会社から特例有限会社に移行する際の定款変更や登記申請手続は、原則として不要である。しかし、旧有限会社が株式会社として存続するからといって、旧有限会社法に基づいて設立された会社に対して株式会社に関する規定を全面的に適用すると、会社の負担や会社債権者・社員の利害問題等、数々の混乱が生じる。そのため、特例有限会社に適用される条文についての経過措置及び会社法の規定の適用の除外等の規定が会社法整備法に設けられている。これは、旧有限会社として有していた属性を排除するのではなく、できるだけ旧有限会社の属性を特例有限会社の機関、組織の運営、管理にも反映させようという趣旨である。
旧有限会社と特例会社の比較
特例会社は、商号中に「有限会社」という文字を用いなければならず、特例有限会社である株式会社以外の株式会社、合名会社、合資会社又は合同会社であると誤認されるおそれのあることを明示するためである。また、種類株式、新株予約権及び社債じゃ旧有限会社は発行することはできなかったが特例有限会社は株式会社であるため、発行することができる。このように、旧有限会社が特例会社へ移行する際の変更点がいくつかある。(定款、資本について)会社法の施行に伴い、旧有限会社から特例有限会社となった場合、旧有限会社の定款、社員、持分及び出資一口は、それぞれ特例有限会社の定款、株主、株式及び一株とみなされる(会社整備2条2項)旧有限会社では、社員の数は、原則として50人以下と制限されていたが、特例有限会社の株主数に制限は設けられていない。また、特例有限会社の会社施行日における発行可能株式総数及び発行済株式の総数は、旧有限会社の資本総額を出資一口の金額で除して得た数とされる(会社整備2条3項)。例えば、旧有限会社で資本の総額が2000万円、出資一口の金額が200円の場合、会社法施行日における発行可能株式総数及び発行済株式の総数はそれぞれ10万株となる。したがって、特例有限会社の発行可能株式総数と発行済株式の総数は一致することになり、特例有限会社がその後、募集株式の発行をしようとする場合は、発行可能株式総数を増加する旨の定款の変更が必要になる。
株式の譲渡制限
旧法有限会社においては、有限会社の社員が他の社員に持分を譲渡することは自由にできるが、社員以外の者に譲渡するときは社員総会の承認を要する(旧有限19条1項・2項)とされていた。そこでこの旧有限会社における規定を特例有限会社でも引き続き存続させることした。すなわち、特例有限社員は、その発行する全部の株式の内容として①株式を譲渡により取得する場合には当該特例有限会社の承認を要する旨、及び②当該特例有限会社が承認をしたものとみなす旨の定款の定めがあるものとみなされこの定款の定めと異なる内容の定めを設けるような定款の変更はできないこととされた(会社整備9条1項・2項)なお、特例有限会社は、株式の譲渡制限規定について登記を申請する必要はなく、登記官が職権により登記をする(会社整備136条16項2号)。
みなし種類株式、旧有限会社の出資一口は平等に取り扱われるが、例外として議決権を行使できる事項(旧有限73条)については、出資口数に応じない旨の定款の定めをもうけることができた。そこで、この定款規定を維持するために、旧有限会社から特例有限会社へ移行した場合、旧有限会社の定款に定められていた下記の各イの特別の定めについては、特例有限会社の定款に各ロの種類株式の定めがある者とみなされる(会社整備10条)。
①議決権に関する定め。イ、議決権の数又は議決権を行使することができる事項についての特別な定め(旧有限39条1項但書)ロ、株主総会において議決権を行使できる事項につき異なる定めをした種類株式(108条1項3号)
②剰余金の配当に関する定め。
③イ利益配当に関する特別の定め(旧有限44条)。ロ剰余金の配当につき異なる定めをした種類株式(108条1項2号)。会社整備法10条により、種類株式とみなされる株式がある場合、特例有限会社は、会社法施行日から6か月以内に、発行可能種類株式総数及び発行する各種類の株式の内容、単元株式数について定款の定めがあるときはその単元株式数、発行済株式の総数ならびにその種類及び種類ごとの数を登記しなければならない(会社整備42条8項、911条3項7号~9号)。なお、この登記を申請するときまでに、上記の事項に変更が生じたときは、遅滞なく、当該変更に係る登記と同時に、変更前の事項の登記をしなければならない(会社整備42条10項)。旧有限会社の上記①から③イに関する定款の定めは登記事項ではなかったため、当該事項定めの有無を登記所では把握していない。そのため、登記官が職権で登記をすることはできないからである。
機関について
(1)特例有限会社の必須機関は、株主総会と取締役であり、監査役は任意機関である。また、取締役会、監査役会、会計参与、監査等委員会又は指名委員会等を置くことはできず、大会社であるか否かにかかわらず、特例有限会社は会計監査人も置くことはできず、大会社であるか否かにかかわらず、特例有限会社は会計監査人も置くことができない(会社整備17条1項2項による326条2項の読み替えと、328条2項の不適用)
(2)取締役について、旧有限会社と同様、取締役の員数に制限はなく、任期に関するきていもない(会社整備18条による332条の不適用)。しかし、旧有限会社と異なり、取締役の選任決議は株主総会の普通決議により行うが、定款をもってしても、定款数を総株主の議決権の3分の1未満とすることはできない(341条)
(3)監査役について、旧有限会社と同じく、特例有限会社は、定款に監査役を置く旨の定めを設けた場合には、監査役を置くことができる(会社整備17条による326条2項の読み替え)そして特例有限会社の監査役の範囲は会計に関する事項に限定する旨の定款規定があるものとみなされる(会社整備24条による389条1項の適用)なお、監査役の員数、任期には制限はない(会社整備18条による336条の不適用)。
株主総会
(1)招集手続は、旧有限会社における社員総会と同時に、招集通知の方法の制限はなく(299条2項)、通知は会日の1週間でよく、定款をもってさらに短縮することができる(299条1項)。また、原則として議題を通知する必要はなく(299条4項)定時株主総会の招集通知に計算書類等を添付する必要もない(437条)。また、少数株主による総会招集請求の資格要件は旧有限会社と同じであり、総株主の議決権の10分の1以上を有する株主に与えられている。これは会社法297条の特則である。ただし、定款をもって招集請求権を制限し又は一切排除することも可能である。
(2)決議要件、特例会社の特別決議の要件は旧有限会社の特別決議と同様である。総株主の半数以上(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)であって、当該株主の議決権の4分の3(これを上回る割合を定款で定めた場合にあってはその割合)以上の賛成が必要である(会社整備14条3項による309条2項の読み替え)
少数株主権、株主総会で学習した株主総会招集請求権のほか、業務の執行に関する検査役選任請求権、会計帳簿の閲覧等の請求権、役員の解任請求権の行使要件として必要な議決権は、旧有限会社の要件と同じく、総株主の議決権の10分の1以上である(会社整備14条、会社整備23条による358条1項の読み替え、会社整備26条による433条の読み替え、会社整備39条による854条の読み替え)。
特例有限会社と公開会社でなく取締役会設置会社でない株式会社の比較
特例有限会社が通常の株式会社へ移行した場合、他に定款変更決議を経ない限り公開会社でなく、かつ取締役会設置会社でない株式会社となる。
株主総会について、公開会社でなく、取締役会設置会社でない株式会社では、特例有限会社と異なり(会社整備14条1項参照)株主総会の招集を請求できる株主は、総株主の議決権の100分の3以上を有する株主である(297条2項)。株主総会の特別決議は、当該株主総会において議決権を行使することができる株主の議決権の過半数(3分の1以上の割合を定款で定めた場合にあってはその割合以上)を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の3分の2(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その場合)以上にあたる多数をもって行う(309条2項、特例有限会社につき、会社整備14条3項)。
取締役について
特例有限会社では、取締役の任期に関する制限はないが(会社整備18条による332条の不適用)、公開会社でなく、取締役設置会社でない株式会社では、取締役の任期は、選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までである(322条1項)。また、公開会社でなく取締役会設置会社でない株式会社の取締役は、株式会社に著しい損害を及ぼすおそれのある事実があることを発見したときに直ちに、当該事実を株主(監査役設置会社にあっては、監査役)に報告しなければならないが(357条)、特例有限会社の取締役は、当該報告義務がない(会社整備21条による357条の不適用)
監査役について
特例有限会社では、監査役の設置は任意である(会社整備17条による326条2項の読み替え)。公開会社ではなく、取締役設置会社でない株式会社でも監査役の設置は任意であるが、会計監査人設置会社である場合には、監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社である場合を除き、監査役を置かなければならない。(327条3項)。なお、特例有限会社は、たとえ大会社の要件に該当することとなったばあいでも会計監査人を置くことはできない。(会社整備17条1項2項による326条2項の読み替えと、328条2項の不適用)。特例有限会社では、監査役の任期に関する制限はないが(会社整備18条による336条の不適用、)公開会社でなく、取締役設置会社でない株式会社の監査役の任期は、選任後4年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までである(336条1項)。特例有限会社は監査役の業務監査権限は認められず、会計監査に限定されているが(会社整備24条による389条1項の適用)、公開者でなく、取締役会設置会社でない株式会社の監査役の監査範囲は、定款をもって会計に関する事項に限定する旨の定めを設けない限り、監査役は業務監査権限も有することとなる(389条1項)
会計参与、会計監査人について
特例有限会社では、会計参与、会計監査人を置くことはできない(会社整備17条1項2項による326条2項の読み替え)が、公開会社でなく、取締役会設置会社でない株式会社では、定款の定めによって、会計参与、会計監査人を置くことができる(326条2項)。
計算について
特例有限会社は、決算公告をすることを要しないが(会社整備28条による440条の不適用)、公開会社でなく、取締役会設置会社でない株式会社では原則として、決算公告をすることを要する(440条、計規136条)。また、計算書類等の備置場所は特例有限会社の場合は本店のみであり公開会社ではなく、取締役会設置会社でない株式会社では、本店及び支店である(442条、会社整備28条による442条2項の不適用)。
組織再編について
特例有限制限会社は、吸収合併存続会社及び吸収分割承継会社となる吸収合併及び吸収分割を行うことはできず、また、株式交換及び株式移転、株式交付をすることもできない(会社整備37条・38条)。公開会社ではなく、取締役会設置会社でない株式会社においては、いずれも可能である。
休眠会社のみなし解散について
特例有限会社では、取締役の任期がないこととの関係上、休眠会社のみなし解散の規定は適用されないが(会社整備32条による472条の不適用)、公開会社ではなく取締役会設置会社でない株式会社には、休眠会社のみなし解散の規定の適用がある(472条1項)。
特例有限会社から株式会社の移行
特例有限会社は、以下の①及び②も手続きを経て、いつでも、通常の株式会社に移行することができる。(会社整備45条・46条)。なお、いったん通常の株式会社に移行した後は、特例有限会社に移行した後は、特例有限会社に戻ることはできない。
①商号中に「株式会社」という文字を用いる定款の変更決議をする(会社整備45条)。
②当該特例有限会社についての解散登記と移行後の株式会社についての設立登記を①定款の変更の決議から、本店所在地においては2週間以内に、支店所在地においては3週間以内に行う(会社整備46条)。これら2つの登記は同時に申請することを要し、いずれかにつき却下事由があるときは、共に却下される。(会社整備136条21項・23項)。
株式会社と持分会社
出資の決定に際しては、株式会社と持分会社の性質の違いから、以下の様な差異が生じる。株式会社は有限会社社員のみから構成され、株主の個性は問題とされず人的な結びつきも弱く、さらに、株式会社は元来多額の資金を集積した大規模な事業を行うことも可能とする法的技術であるため、機動的な出資が求められる。他方、持分会社は社員の個性が重視され、社員間の関係も密接であるため、出資についても私的自治が認められる。株式会社における出資の内容は、原資定款において「設立に際して出資される財産の価格又はその最低額」という形で定められている(会27条4号)。発行可能株式総数については原資定款に記載または記録することを要せず、会社設立の時までに発起人全員の同意によって定款を変更してその総数の定めを設けなればならない(会37条)。設立の際に発行する株式数については発起人全員の同意を持って、発起人に割り当てる設立時発行株式数については発起人全員の同意を持って、発起人に割り当てる設立時発行株式数とこれに対して払い込まれるべき金銭の額を決めればよいものとされている(会32条)。また、発起人は少なくとも1株は設立時発行株式を引き受けなくてはならないとして(会25条2項)会社に対する出資を確保するが、募集設立の場合は発起人以外からも引受人を募ることで、出資者を確保するが募集設立の場合には発起人以外からも引受人を募ることで、出資者を確保することができる(会57条以下)。株式会社においては金銭その他財産を出資の目的としなければならないが(会28条1号)、設立に際して金銭以外の財産を出資できるのは発起人に限られる(会34条1項)。これに対して持分会社においては、定款で、社員の出資の目的およびその価格または評価の標準を定めなければならないとされる。(会576条1項6号)。すなわち、社員の出資が何によって行われるか(金銭、現物、労務、信用等)またはそれについて具体的に特定することが求められ(金銭あるいは土地であればどこの土地か)さらに、金銭以外については評価額を記載または記録しなければならない。なお、有限責任社員の出資の目的は金銭およびその他の財産に限られる(同条1項6号)。出資の履行については有限責任社員のみからなる株式会社と合同会社と無限責任社員をその構成員とする合名会社・合資会社では、会社財産確保の観点から、以下の通り異なる。株式会社および合同会社では、設立時において出資が現実に履行されなければならない。株式会社では発起人は引受後遅滞なく、また募集設立における引受人は払込期日または期間内に出資の全部について履行しなければならず(会34条、63条)、合同会社においては、社員は定款の作成後設立登記までに出資を全部履行しなければならない(会578条)。有限社員のみからなるこれらの会社では会社債権者の担保となるのは会社財産のみであり、一定の財産が現実に会社に拠出されることが求められるからである。さらに、株式会社では、金銭出資については払込取扱銀行などのに対して払込みを行い(会34条2項)、募集設立の場合は払込金の保管証明書の交付を受けなければならず(会64条)現物出資については検査役の調査を要する(会33条)。合名会社および合資会社では、出資は必ずしも設立段階で履行されなくてもよく、履行の時期や価格は自由に定めることができる。これは会社財産が拠出されていなくとも、無限責任社員または直接有限責任を負う合資会社社員が会社債権者に対して直接責任を負うからである。
参考文献:『演習ノート会社法(第7版)』 著 奥島孝康 鳥山 恭一
『司法書士試験 ブレークスルー8会社法・商法』 lec東京リーガルマインド
コメント